骨董物語

その壱 「竜」
十八世紀に英国で作られた大鉢


十八世紀に英国で作られた大鉢


 この竜の大鉢は一見中国の染め付けの磁器のようだが、実は十八世紀に英国で作られたものである。白く薄く焼き締める磁器は、カオリンという珪土がある中国の景徳鎮ではじめて出来たものであり、海外で長い間それは羨望と憧れの的だった。中国からヨーロッパに輸出される磁器は、長い船旅を無事に終えて西洋人の手に渡る頃には宝石に匹敵するほど高価なものになっていた。だからそれらしいものを自分で作ろうとする西洋人も多く、この鉢もそういう作品の一つである。カオリンがないからこれは白地の磁器ではなく、土色の陶器を白く塗った上に、いかにも中国らしい竜を描いたものなのだ。よく似せたねと褒めてあげたい力作である。

十八世紀に英国で作られた大鉢

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