旅 便 り
セドナ−「林住期を愉しむ」より

椅子の画

 朝早く目を覚ますとホテルの窓いっぱいに荒削りな赤い山肌が迫っているのが見えた。UFOが大群で飛来しても着陸できそうな台形の山である。アリゾナはUFOの出現がずば抜けて多い州だと言われ、実は私も十数年前に取材旅行をしたとき、それらしいものを遠目にだが目撃したことがある。
 とりわけ目撃例が多いのがこのセドナで、遭遇といった方がよさそうな至近距離の出現がしきりと報告されている。



 セドナを歩くとカテドラル・ロックとかベル・ロックとか、あちこちにそそり立つ異形の岩山が、天候によって微妙に彩りを移しながら、自然の祭壇のような神秘的な雰囲気を醸し出している。砂漠地帯の中にあってセドナだけは川があり緑も豊かで、その緑と赤い岩や土との対比が美しく、いかにも神に祝福された聖なる土地という感じがする。
 ここには、方々にヴォルテックスと呼ばれる場所がある。ヴォルテックスとはラテン語からきた「渦巻き」を意味する言葉で、その場所は「気」が渦巻くスポットだと信じられているのだ。ヴォルテックスで瞑想してその波動に感応すると、高次元のチャネルが開いて意識が飛躍的に拡大上昇することが少なくないという。セドナの瞑想で宇宙意識に目覚めて、以来チャネラーとして活躍している人が日本にもいる。
 私たちも早速岩山を登り下りして、波動の合いそうなヴォルテックスを探し歩いた。人気のあるヴォルテックスはさまざまな小石を積んだり並べたりヒランヤなどの図形を描いてあったりするからすぐわかるが、無印でもハッとするほど強い「気」を感じる場所があちこちにある。



 ヴォルテックスで目を閉じるなり、イメージどころかまだなにもしないうちからワーッと真っ赤な色に包まれるのを感じた。それは目を閉じる直前に見た太陽の影響だろうと思ったのだが、その赤がよく見ると粒子の渦で、それが血管のような川の流れに見えたりしながら、橙(だいだい)に紫に薄緑にと、みるみる移り変わっていくのはどういうことなのか。どの色も草木染めの古裂のように優しく暖かい色である。しかもなんという快さだろう。光の中に蕩(とろ)けていくようなその感覚は、永遠に身を委ねていたいと思うほどだった。

「林住期を愉しむ」(海竜社)より抜粋

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