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		  私が住んでいるマンションの部屋は、渋谷では閑静な住宅地にあるけれど、スモッグはかなりひどい。そのせいかどうかわからないけれど、安物のミニコンポはすぐにレンズがダメになる。 
		   購入して1年にも満たないうちに音飛びがするようになったK社のミニコンポは、その当時、修理に来てくれた人がとても好感度が高かったので、すぐにまた調子が悪くなったものの「まあ、しょうがないかな」と、だましだましつきあうも、もう限界か。 
		   MDが必ず3曲目くらいになると止まってしまうし、CDもときどき音が飛ぶ。 
		   しかたがないので、ネットでサービスセンターを調べて電話をした。 
		    
		   電話の応対をしてくれた若い女性が、これまた感じよく、明るい。 
		  「保証書とかありますか?」 
		  「ないんですぅ。見つかりませんー」 
		  「前回の修理のときの領収書はお持ちですかぁ?」 
		  「保証書すらないのに、領収書なんかあるわけないじゃないですかぁ(笑)」 
		  「そうですよねえ(大爆笑)」 
		  というような感じで、終始楽しく応対してくれて、それでもちゃんとこちらが聞きたい用件には適切に答えてくれた。 
		   いずれにせよ、オーディオの不具合は見なければ治るかどうかはわからない。その場合、出張費は必ずかかってしまって、修理費は別途であるが、予算をあらかじめ言っておけばその範囲でできるかどうかを教えてくれる、ということだった。 
		 電話をして2日後、修理のためにイケメンの青年がやってきた。 
		   引越しの整理中でスラム化している部屋! あー、恥ずかしいっ! 
		   少年隊の東くんにもちょっと似た彼いわく「うーん。これは修理ですね。でも、修理してもかなりかかりますよ」 
		  「かなりってどのくらいかかるのかなあ? 捨てたほうがいい?」 
		  「うーん、2万くらいかかるかも。捨てたほうがいいかどうかはちょっと言えないんですけれど・・・」 
		  「もし、自分のだったらどうする?」 
		  「ボクのだったら、買い換えますね(キッパリ)」 
		 ということで、私の安いミニコンポとのおつきあいもあとわずかになりそうなのだが、「スピーカーはまだ使えます。ミニコンポはどれかがダメになると使えなくなってしまうので、できればバラのもののほうがいいと思いますよ」 
		   ミニコンポ用のスピーカーは、アンプによっては耐えられないケースもないとはいえないが、家庭で聴く分には充分使えるという。 
		  「アンプはAVアンプを買うというのもテですね。でも、買ってから必要な機材がつなげなかったりすると困るので、まずは店に行って、資料を集めること」 
		   ひえー、めんどうくさいっ! 
		   そして延々、イケメン君はオーディオ選びのポイントを教えてくれたのだった。 
		   私はサウンドレコパル(オーディオ誌。すでに廃刊)の編集もやっていたという輝かしい過去があるにも関わらず、例によってメカはまったくわからないので、「賢いイケメン君だなあ。こういうのが1家に1人いると便利だろうなあ」と思いながら聞いていた。 
		 そんなド素人の私にもとってもよく理解できた「オーディオ選びのポイント」は、「大は小を兼ねる」ということだった。 
		   たとえば、CDを再生する機能は、ミニコンポでも通常のコンポでも、もちろんMDウォークマンでも、部品の数は違わないという。 
		  「部品は小さくなればなるほど割高になるし、小さい部品のほうが大きい部品よりも精度が落ちるのは当然」だという。 
		   なるほど、なるほど。 
		  「つまり、同じ値段なら大きい製品のほうがいい部品を使っている可能性があるというわけね」 
		  「ま、一般的にそうですね。あと、高いものはそれなりに部品もしっかりしているので、中を開けると一発でわかるんです」 
		 4万円弱のミニコンポ・ユーザーとしては、もう、お恥ずかしい限り。ああ、お願いだからもう見ないでちょうだいという感じ。 
		「一応、レンズのクリーニングをしておきますね。こういうCDが上にあるタイプは、どうしてもレンズが汚れやすいんです。もっとも、フロントローディングは出入りの部分が壊れやすいという弱点もあるんですけれど」 
		 レンズを拭く要領は、アルコールをつけた綿棒を、手の甲で「水分が感じられないくらい」の量に調節するのがポイント。 
		  「これでだいぶ違うと思うけれど、でも音とびはなおりませんね」 
		 ナイスな青年とのひとときは、出張料2500円なり。 
		 
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