*** 「平成蔵人考」の報告 ***
('03年3月3日)

1月の寒風吹きすさぶなか、400キロの米を洗うという強制労働により、日本酒の寒仕込み体験をした。
そして、2月。
晴れて「蔵出し」である。
山形県白鷹町加茂川酒造「平成蔵人考」第7幕。
無農薬合鴨農法の普通米「さわのはな」を使った大吟醸が「蔵人考」である。
組頭はフォーク歌手の小室等さん。番頭はアルカディア財団の太田荘一郎さん。

私はひょんなことから昨年の蔵出しに参加。以後、すっかり似非白鷹人になっている。
毎月のように舞い戻り、その都度酒びたりの白鷹人の仲間に入れてもらっているうちに、「酒びたりの白鷹人」に同化してしまった。
それはさておき。
今回、蔵出しに参加するために、急遽、東京から観光バスをチャーターした。
30名ほどの参加。列車のツアーと違いバスは「個室」感があり、その分アットホームだ。
新宿から白鷹まで、休憩を含め7時間。
午後3時すぎに到着し、一同は露天風呂へ直行。
その夜は「もりもりハウス」というログハウスで、うさぎ鍋、ひきづりうどん、味噌もちといった名物と、昨年11月におすぎさん(おすピーの杉浦孝昭さん)が創ってくれたレシピのメニュー(きんぴら、生ハム+ラフランス、鴨のポアレなど)。そしてもちろん「蔵人考」
後日聞いた話では、40本用意した日本酒はすべてなくなり、主催者(財団?)は大赤字だったとか。
申し訳ないっ。
2次会も恐ろしい盛り上がりののち、午前0時近くに前夜祭は終了。

当日は、朝9時30分に出発して、「どりーむ農園直売所」へ。
冬は野菜が少ないけれど、それぞれにお買い物ののち、農協へ移動。
地元のそば振興会のおじいちゃんたちによる「そば打ち」指導で、昼食用のそばを打つ。
できたそばは、太かったり、細かったりで、なかなか味も腰もあったが、やはり名人の打つそばは違う。
白鷹では、そばにはわさびを入れず、南蛮を入れる。
添え物は青菜(せいさい)の漬物。(今回は白菜のキムチもあった)
そばですっかり満腹になったところで、やっと「蔵出し」会場である加茂川酒造へ。
蔵の気温は昨年よりは暖かいとはいえ、じっとしていれば底冷えがする。
飲むべし、食べるべし。会場には100人近くの飲兵衛が集まっていた。

絞りたての生酒はもちろん、利き酒コーナーもあり、日本酒初心者は味の違いを楽しめる。
また、蔵ならではの「泡汁」(味噌汁に麹の泡を入れたもの)は身体が温まる最高のご馳走。
無農薬米を創るために一生懸命働いてくれた鴨たちも、鴨鍋となってお役を果たした。
そして、仕出しの料理とともに出される、加茂川の漬物。これが逸品。
酒の麹に4回も漬けるという麹漬け。
うり、きゅうり、丸なす、しいたけ、たけのこ、かずのこ・・・・
ほんのり甘く、麹の香りがぷーんとして、暖かいごはんが欲しくなる。
「売ればいいのに」というリクエストが殺到しているけれど、売り物にしないところがいいのかも。
(おみやげに麹ごといただいたというのに、宴会が終わったあと、残ったものをすべてもらってきた。)

蔵出しのメイン・イベントは、本来は小室さんの弾き語りなのだけれど、今回は急遽小室さんが欠席され、ピンチ・ヒッターとして登場したのが、井上弥生ちゃん。
白鷹町の隣りの長井市在住、というところまでしか確認できなかったけれど、20代で、とてもチャーミングな女性。しかし! 容姿とはまったく想像がつかないのだけれど、民謡歌手として全国停会で優勝している実力派ということで、一同大感動。
アメリカ人とオーストラリア人男性のデュオによるサイモン&ガーファンクル風ステージもあり、「アジア国際音楽祭」を隔年主催している白鷹町の(太田さんの)底力を感じた。

そして、極めつけは、農大大根踊り。
農大OBである加茂川社長鈴木龍ちゃんと、鈴木みそ店社長の鈴木徳ちゃんが音頭をとってのパフォーマンス。大根ならぬ、日本酒のビンを持って、手足を振り上げる。
豪快で、爽快。大笑い。
なんて人ごとだと思ったら、第2幕は参加者の半数くらいが引っ張り出されて、一同で手足を振り上げる。
すっかり酒がまわり、いい按配になってしまった。

東京への便は、午後4時出発。
一行のバスが出たあと、私は後片付けを少々手伝った。
といっても、残り物の漬物や、ふきのとうのてんぷらを皿に盛っていただけなんだけれど・・・。

こうしたイベントは準備とあとフォローが大変だ。
加茂川酒造のスタッフは、みんなが酔っ払っている最中も、デジカメで撮影した写真によるオリジナル・ラベルのマイボトルを製作したり(これは今年から始めたサービスで、なかなか好評だった)、レジを売ったり、お酒を徳利に足してまわったりと忙しく働いていたが、イベントが終わって、やっとひといきなのだろうな、と思った。
残り物を整理しているときに、飲みかけの酒が各テーブルにあるのが気になった。
米を創っている鍬頭も、加茂川のおばあちゃんも、「もったいない」と口にしていた。
「もったいないから、飲んじゃいな」とおばあちゃんが言うので、私も手元にあったのを1杯飲み干した。
昔「ごはん粒を残すと眼がつぶれる」と祖母には言われて育ったものだが、日常では平気でごはんを残し、捨てている。
「もったいない」「もったいない」といいながら、飲みさしの日本酒を集めている人に「飲みかけでもいいの?」と聞いたら、「アルコールだから大丈夫。残り物には福がある」と言われた。

1日延泊して東京に戻った。
残り物の漬物を食べ、生酒を飲み、おばあちゃんの「もったいない」という言葉を思い出す。
今年もまた、第8幕の「蔵人考」が始まる。
今年は田植えだけじゃなくて、稲刈りも行けるといいなと思う。

会社には白鷹でいただいたたくさんの猫柳が活けてある。
昔うちで飼っていたみーちゃんのお手てのような、銀色のふわふわがたくさんついている。
私は猫柳が大好きなので、抱えるほどの猫柳をいただいたときには思わず歓声をあげてしまった。
春がそこまで来ている感じがして、うきうきしてくる。
来月もまた白鷹に行く。
来月は山菜だ! 


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