*** ボーナスにまつわる話 ***
(12月3日)

毎年年末になると、そこここでボーナスのことが話題になり、零細企業の社長としてはとても肩身が狭い思いをする。
自慢じゃないが、生まれてこのかたボーナスなんて1度ももらったことがないにも関わらず、年末になるとなんとかボーナスを出してあげられないかと工面に工面を重ね、結果的にはほんとの気持ちばかりの手当と、バーゲンセールのための半休ということになる。
給料にしてもボーナスにしても、もらうほうにとっては些少であっても、支払うほうは四苦八苦だったりするが、世の中不景気になってやっと世間並みになったなんて、胸をなでおろす零細企業社長は私ばかりではあるまい。

ところで、日経産業消費研究所が働く女性300人にインターネット・アンケートを行ったところ、ボーナスで買いたいものの1位が靴だったという。
1位といっても25.3%、76人。2位の「国内旅行」22.3% 67人、3位の「コート」18.7%56人、4位の「バッグ」18.3%55人。
この数字をどう読むか、だが、アンケートを実施したのが10月下旬ともなれば、そろそろブーツを買いたい時期だし、コートやバッグも同様のシーズン的な欲求として当然の結果じゃないかな、と思う。
これが新聞の見出しになると「OLのボーナス 使い道トップ『靴』」となって、あたかも靴が今年のボーナスの目玉みたいになる。
「米国同時テロの影響で需要が減っている海外旅行は14.3%で7位だった」といっても、実際には43人の脳天気なOLさんがいるのである。

複数回答のなかではファッションものが圧倒的に多く、靴、コート、バッグ、アクセサリー、スーツ、ジャケットなどがあげられていて、総合的には衣料品関係が1位ゆるぎなし、という感じ。
2位は海外も含めた「旅行」、そのほかCD、本ときて、デジタルカメラ。
88人(29.3%)が「なにも買わない」と答えている。

支出予定額は、5−10万円が80人(26.7%)、10−20万円は74人(24.6%)、つまりあとの半数は5万円以下か20万円以上となるが、使わない88人を抜かすと58人(19.3%)が該当する。
ここで新聞社は、「5−20万円の利用者が半数以上」と発表しているわけだけれど、私はそれより、0−10万円が何人いるか、というほうが気になる。
たぶん、200人近く(つまり3分の2)くらいになるんじゃないだろうか。
「買いたいもの」のなかに10万円を越えるものは見あたらないように思える。
OLが買い渋るというのは、本当の不況がいよいよやってきたということだ。

しかし。
世の中、「男女共同参画」だの「行政改革」だの叫ばれているなか、密やかにレース(階級制度)ができつつある。
銀座、神保町、六本木、品川などに次々と建設されている高層マンションは「億ション」で、2億や3億は当たり前なのだという。
うちの近所でいえば、東急本店が改装して、1階はシャネルだの、ブルガリだの、カルティエだのといった高級ブランドのテナントになり、いつでもかならず、店内に客がいるのである。
地下の高級鮮魚売場で魚を選ぶがごとく、日常着でなにやら選んでいるカップルや母娘連れなど、あまりにさりげないので、「高級ブランドといっても、ほんとうはあまり高くはないのではないだろうか」と、ちょっとのぞいてみたら、指輪が360万円とか、安いもので180万円とか、ザラだった。
私がなによりほしいサンローランのジャケットは20万で、いろいろ見たあとでは「あら、ずいぶんお安いわ」なんて勘違いしてしまうラインナップである。
シャルル・ジュールダンをはじめ、高級靴店もあるが、たかが靴に10万円近くかける神経がわからない。

「あら、靴が7、8万円なんて、当たり前よ」
あるおハイソ雑誌の編集長だったMさんにそう言われたことがあるけれど、私の持っている靴で最高に高いものだって3万円くらいが限度だ(と思う)

ところで、いちだんと高級に拍車がかかった東急本店7階には「WithYou」というリサイクル・ショップがある。
リサイクル・ショップのわりにはちっとも安くないと私は思うのだけれど、それでも「ミンクコート 80万円」とか、「ダイヤモンドリング 50万円」なんていうのが並んでいるあたり、さすが、と思う。
この超高級リサイクル・ブティックで、私は新品冬ものスーツを15000円でゲット。
リサイクルでもなかには新品があって、良品にあたれば10分の1の金額で買える。
そんな私は「プチブル」以下のレース(階級)間違いなし。

知人のなかに、ネットバブルでIPOして、いきなり超リッチになったという人が何人かいる。
伝え聞くところでは、大金を手にするとたいていの人は豪邸を買い、男性は次に車、愛人と続くのだそうだ。

でも、最近、お金持ちの友達も増えてきつつあるような気がする。
代々きちんとしたおうちに育っている人は、お金があってもなくても、人間的に魅力がある人が多い。
つまり、私は「成金」がダメなんだな。
ほどほどに質素で、さりげなく質のいいものを選ぶ目をもっていれば、お金持ちでなくてもいいのだけれど、成金タイプは「質」より「金」でしかものごとを判断できない。
というか、本質を判断できる目をもたないから、金品で飾ることしかできないのだと思う。
OLが無駄使いしなくなるということは、虚飾に溺れる余裕がなくなり、本来の生活を見つめ直す季節に入ったということかもしれない。
ブランドはブランドのよさがあり、それを理解し、身につける価値のある人たちがパトロンとなればいい。
庶民は庶民らしく。
なかなかよい時代になるんじゃないだろうか。


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