その他、学会という場所が初めてだったこと、コミュニケーション、インターフェイスデザイン、ウェアブルなど私の興味のある分野についての発表が行われていたので、たくさんの発表を聞いてきました。
その中で特に印象的だったものを報告としてまとめてみました。


<インターフェイスデザイン(インタラクション)>
「知覚・行為循環に基づくパートナーロボットのコミュニケーションのための行動生成」
人間とロボットとのコミュニケーションについての発表でした。ある行動を何度か試すうちに次の状態が予期できる状態がつくることができれば、人間とロボット間のコミュニケーションが成立するのではという仮説に基づいて実験された結果を発表していました。パートナーロボットは、iMacに超音波センサ、光センサ、CCDカメラ、モーターを付けた動くiMacです。これだけでもかなり興味深いロボットなのですが、センサに反応して動き、障害物を避けながら進めるかを実験したものです。最初はロボットと人間のコミュニケーションが上手くいかず障害物を避けることをできなかったのですが、何度か試すうちにロボットはパターン認識ができるようになり、人間もそのロボットの動きのくせをとらえることができるようになりました。ロボットに全てのことを学習するのを求めるのではなく、できることとできないこと、理解できることとできないこと、と言うように人間が探索調整してあげるプロセスが必須なんだと感じました。
学会1

<インターフェイスデザイン(ユビキタス)>
「ユビキタスコンピューティングのための入出力制御デバイスの動作記述方式」
いつでもどこでもコンピュータにアクセスできるユビキタスコンピューティング環境を実現するための入出力デバイスの研究を大阪大学とNECが共同研究を行っている。ユビキタスコンピュータの世界では、他のコンピュータやPC、PDAなどと連携動作することが必要になってくるので、そのハードによって動作を変化できなくてはいけないのです。さらに、デバイスとデバイスを繋ぐものは軽くてシンプルなものがいいということで、開発を続けているそうです。その動作を伝える言語としてはECAと言う形をつかうそうで「イベント」「コンディション」「アクション」の3つを一組にして記すのです。これにより、アウトプットされたデバイスからまた言語として入力されハードウェアにその情報が伝わるらしいです。難しいことはわからなかったのですが、目の前に見える動作からは想像もつかないような言語を駆使し、このコンピュータの世界ができるのだなとおぼろげながらに感じました。


<人工現実感(システム開発・評価)>
「共有没入仮想空間を用いた遠隔プレゼンテーション」
近年のギガビットネットワーク環境を用いることで、遠隔地に行かなくても研究サイトでプレゼンテーションを聞きデモンストレーションを体験することを目指している研究です。プレゼンテーション資料の共有や3次元空間を利用した立体的な資料の利用、仮想空間共有型のデモンストレーション実行などが遠隔プレゼンテーションに求められる要件になり、アバタとして遠隔地から登場することができるようになります。これによって、見てる方からすると実際にその共有空間でプレゼンテーションをうけているという仮想現実が可能になるのです。ビデオアバタとして登場してプレゼンテーションをしてくれるなんて、ホログラフで会話するスターウォーズの世界も近い気がしてドキドキしました。現在やっているビデオ会議の新化形とも言えると思います。

学会2
<感性(評価)>
「A Study on Imaginary Influence of Colors and Fonts for Web Page Design」
私の職種にいちばん近い研究でなるほどね!と素直に思えるものでした。WEBサイトのデザインをする際、色やフォントを自分の感性にいちばん近いものにするという観点からの研究で、ツールで登場すればぜひ使ってみたいツールでした。自分の好きなサイトの背景色、文字色、フォントを覚えておいてくれます。更にサイトをどんどん登録していくと、統計で自分の好きなサイトのマップがイメージで表れます。その中から、どういった感じのサイトをつくりたいかで、色とフォントを決定し自動的にあWEBサイトを形成してくれるものなのです。自分でやってみてこの結果がどうなるのか、また実際にビジネスの感覚として使えそうなのかとても知りたくなりました。ぜひ、世の中にツールのひとつとして登場して欲しい限りです。


<ネットワーク応用>
「共存在的仮想空間創出のための同期運動テーブルの開発」
ITネットワークにより遠隔コラボレーションという視点が高まってきました。この同期運動テーブルは遠隔地からコミュニケーションの場の共有という観点でつくられたもので、離れたところで一緒に何かできるという期待感が沸く研究内容でした。テーブルを使った実験方法は、離れている場所同士で回転テーブルをお互い廻します。一方のテーブルを廻している状態が相手の方にアバタとして映し出され、一緒に廻しているように見え、廻している力加減も一緒に伝わります。この研究では、電話などの音声だけのコミュニケーションよりも相手との距離や存在感を強く感じることができることが確認されたそうです。空間を飛び越えて同じ感覚を味わえる世界が来ると、遠距離恋愛や家族同士の繋がりも増える気がしました。


学会3 <インターフェイスデザイン(コミュニケーション)>
「デジタルカメラが音で作り出す様々なコミュニケーションの"場"」
撮影者と被撮影者との間で、もっとカメラをコミュニケーションツールとして使おうとキャノンの開発センターからの発表でした。「撮り音」として名付けられたシャッター音で楽しく演出させる機能があるということです。例えば、セルフタイマ音「イョー」シャッター音「ポンっ」の歌舞伎を想定したもの。こんな音が鳴ると意外性で被撮影者を笑わせる効果があると言っていました。また「琴ヶ浜」の泣き砂の音で撮影して「これって何の音?」と会話が弾む場合も想定されているそうです。気軽にシャッターを押せるデジタルカメラだからこそ、コミュニケーションの一つとしてシャッターを押してみてはどうか?というキャノンからの提案でした。


<ウェアラブルインターフェース>
「ユビキタスオフィス実現のためのパソコン環境ローミング技術」
インターネットの普及に伴ってビジネス上パソコンは必要不可欠になってきていて、外出先で仕事をするという場面も多くなりました。インターネットカフェなどで共同利用パソコンを使うということもあります。そんな時に自分のオフィスで使用しているカスタマイズ環境をそのままそっくり共同利用パソコンに移せるといった技術の発表でした。ICカードに秘密鍵を保存し、それによってPC環境をサーバから呼び出す「シェアードPC」という技術です。また環境を呼び出してパソコン使用後は、また最初の何もない環境に戻されるのでセキュリティ面も安心だということでした。いつでも、どこでも、誰でも、安心して情報を受けられるユビキタス環境で必要になってくる場面だと思いました。実際に実験で体験した90%の方が日常業務で使ってみたいと言っていました。
学会特別講演1

<特別講演>
「アジア中央部の民族音楽にひかれて−喉歌の魅力とその謎−」
宇宙物理学を専攻してきた大学院生だった嵯峨さんが喉歌に惹かれたのは、モンゴルに滞在してからでした。喉歌とはモンゴルの遊牧民達独特の唱方で、ホーミーと言われています。口の中で音を共鳴させて2つの異なる音を1人で発声するという技法で、低音を発しながら口腔内の容積を変化させることで高音のメロディも奏でるという演奏形態になります。この高音を倍音と言うらしいのですが、練習を重ねることによってそれを自在に操り1人ハモリができるようになるそうです。楽器のように音を共鳴させることもできるんだと、人間の可能性に触れた気がしました。私も学会から帰ってきてしばらく部屋で怪しいお経のように練習をしてみましたが、高音が聞こえず断念です。ホーミー自体は知っていたのですが初めて目の前で歌っているのを聞いて、民族音楽もいいものだと思いました。この嵯峨治彦さんはCDも出しています。



学会特別講演2 個人的に博物館がとても好きなので「北海道大学総合博物館」の見学もしてきました。北大の歴史、学術テーマ、学術資料に分かれておりとくに資料はすごいものでした。

(北大の歴史展示)
北海道開拓から、札幌農学校時代、クラーク博士の精神が北大のテーマになっているようでした。まさに北海道に根付いた大学だと思いました。現在までのシンポジウムやサロントークの開催の記録などもあり、歴史を感じることができました。

(学術テーマ展示)
北大博物館1  北大で行われている研究テーマからスポットをあてて展示をする場所です。このときGは「有珠火山」と「地震」がテーマでした。またシベリアのサイエンスについての展示やシベリアに住む人の生活など北海道ならではの展示もありました。

(学術資料展示)
私がいちばん見たかった展示です。地球ができてからの生物の進化の歴史を辿る化石、岩石、鉱物、標本などが所狭しと展示してありました。私の見ることができなかった過去の世界の産物がここにあり、それを見ている私と同じ場所にいるんだという現実にワクワクしました。

北大博物館2 北大博物館3

学会と言う場所で、明らかに異色を放つ私が受け入れてもらいワークショップが成功できたのは、おもちゃを快く貸して頂きましたTOMY様、タカラ様のご協力あったからだと思っております。また全面バックアップをしていただきました、大阪大学の土方さん、木村さん事務局の林さん、HISTの皆様、何も分からない私にいろいろと教えてくださって本当にお世話になりました。そして、このような機会を与えてくださった弊社代表の伊藤淳子に感謝いたします。
どうもありがとうございました。

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